真鶴から広がる建築教育と地域再生――芝山哲也先生の志を未来へ

2025/9/5(金) 第3号

本年、癌のために逝去された芝山哲也先生は、当協会の名誉会長理事として、最後まで私たちを導いてくださいました。 大成建設株式会社で常務取締役を務め、東京オリンピック関連事業の責任者を担い、さらに隈研吾氏と共に国立競技場の設計・施工プロジェクトに参画されるなど、日本の建築界に輝かしい足跡を残された人物です。 その功績は国内外に広く知られていますが、先生が引退後に取り組まれた活動は、また別の意味で大きな価値を持っています。

先生が拠点を置いたのは、神奈川県足柄下郡真鶴町でした。 人口減少や高齢化の進行に伴い、真鶴でも全国同様に空き家問題が深刻化していました。 そこに立ち上がったのが、芝浦工業大学建築学部の学生有志による「真鶴設計室」です。

真鶴設計室は、空き家を単に解体するのではなく、改修を通じて新しい価値を創造し、地域の交流や町おこしにつなげることを目的とする学生ボランティア団体です。 住民との対話を重ねながら空き家を蘇らせるその活動は、地域社会から高く評価されると同時に、学生にとっては机上では得られない実践的な学びの場となっています。

芝山先生はこの真鶴設計室を指導し、時に建築の専門知識を、時に社会と建築を結びつける哲学を学生たちに伝えてきました。 「建築は社会を変える力を持つ」という先生の信念は、学生たちの活動に脈々と息づいています。 地域住民と協働し、汗を流しながら空き家を改修する姿は、まさに未来の建築家像そのものです。

先生のご逝去は大きな喪失でした。 しかし、協会は先生の志を未来へつなぐべく、また当協会の象徴として、永遠に名誉会長理事として籍を残すことを決定しました。 さらに、先生が遺された真鶴のラボを当協会が引き継ぎ、真鶴設計室の拠点として無償提供し、その活動を継続的に支援することにいたしました。

空き家問題は、これからの日本社会において避けて通れない課題です。 行政の施策だけでは限界がある中で、学生たちが自ら現場に入り、建築の力で地域を再生する取り組みは大きな意味を持ちます。 それは町おこしのモデルケースであり、同時に次世代の建築家を育成する教育の場でもあります。 図面を引くだけでなく、人々の生活に寄り添い、課題を解決する経験は、彼らが社会に羽ばたいたとき、何よりも強い力となるでしょう。

芝山先生のラボは、今後も学生たちの挑戦を見守り続けます。 そして私たち協会も、その活動を支えながら建設・不動産業界の健全な発展と地域再生に尽力してまいります。 真鶴設計室の活動は、建築の社会的役割を体現し、若き建築家の育成に直結するものです。 芝山先生が蒔いた種は、確かに芽吹き、未来へと力強く育ち続けています。

真鶴設計室の皆様へ

皆さんが地域の方々と力を合わせ、空き家を蘇らせていく姿は、建築が社会に果たすべき大きな使命をまさに体現しています。 単なる建物の改修にとどまらず、人々の交流を生み、町を元気にする活動は、将来の建築家として必要不可欠な経験です。 芝山哲也先生は「建築は社会を変える力を持つ」と常に語っておられました。

その信念は、皆さんが汗を流して地域に寄り添う姿の中に確かに息づいています。 私たち協会は、先生が遺されたラボを拠点として無償提供し、皆さんの挑戦をこれからも支えていきます。

どうか誇りを胸に、一歩一歩の実践を大切にしてください。 その積み重ねが未来を切り拓き、建築家としての礎となることを、私たちは心から信じています。

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